「お金全然ないっすよ」

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ー帰るとこやったすか?
 そうですね。
ー駅から(乗って)ですか?
 いや、近くなんで歩いて。
ーえ、あっち方面です?
 はい。
ーあ、そしたら僕もなんですけど、ちょっと歩きますか?
 いいっすね、てかワン缶行っときます?
ーあ…。(財布家や、カードも家や。今現金確か500円も持ってない…。)ごめんなさい。ちょっと今現金500円も持ってなくて。ワン缶行っとく?って聞いてくれて、行こっ!てすぐにね、僕歳上やし言えたらいいんすけど…。なんかすんません。
 いえ、全然大丈夫ですよ。
ーまぁ、ちょっと… とりあえず歩きますか?

15分くらい一緒に話し、歩いて帰った。
「いや、東京まじで金かかりますよね」と会ってすぐ 初対面の歳下に気を使ったセリフを吐かせてしまい、よくよく聞けば僕の家よりも高い所(家賃)に彼は住んでいた。

その道中、短い時間であったが彼は自然な会話の流れから「お金全然ないっすよ」と何度か口にした。嫌味とかでは決してなかったが、この場面、ちょっと立場上どうしようもなくて(あ、恥ずかしいなぁ)と心がスースーして笑えた。

帰ってポケットをさぐると、左から小銭18円、右から緩くなったグリーンガムが出てきた。
21歳と25歳。
平日火曜の23時。

“お金全然ないっすよ”
うん、僕もです。

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