新宿の人

新宿2丁目の工事現場。立ち方と背丈で”あの人”と分かる。
今日は周りに同業者も見える、前回のようには話せないだろう。
でもとりあえず、挨拶だけでも。その人の前を通り挨拶をする。

ーこんばんは。
　あぁこんばんは。あ、あの前回の。
ーそうです、そうです。今日は後ろでみんな見てるから、あんま話しちゃいけなそうですね。何より前回はありがとうございました。
　いえいえ、こちらこそ、どうも、どうも。
ーそしたら行きます、お疲れ様です。
　ありがとうございます、頑張ります。

同じ日。
新宿歌舞伎町である人と話す。
その人は今日は金がないと言う。
毎日のように会ってるから分かる、
それは奢って欲しいのサイン。
ーなんか飲む？
　ええ、いいの？やったー！
ーどれが良い？
　あ、ロングが良い。本麒麟2本欲しいなぁ、良い？
ーいいよ。
　お会計442円。
＋（プラス）床に100円を落とした。
地べたに顔近づけても見えない。
もう、いい。

同じ日。
帰り道に博多天神に寄る。
今日の店主は顔見知り。
二足の草鞋で働いてると 前回撮らせてくれた人。
豚骨ラーメンを頼む、500円。替え玉一回無料も付けて。
横の客の会話が聞こえる。
「俺はキャバクラなんて行かない」
あれ、最近そんな歌があった？
君はロックなんか聞かない。違う、
俺はヒップホップは歌えない。
（うん？…うん。）
まぁ、どっちでも、いい。

同じ日。時刻は夜の22時。
目の前を花を持った外国人が通る。家に帰り誰かに渡すのか。
マスク越しで顔が見えないが、歩き方がいきいきしてる。
ーHey!
声をかけ、花と容姿を褒める。
彼は振り返りThank you と言う。
が、その足は止まらない。

でも、ちゃんと伝えたら話せそう。

ーIf you don’t mind, I wanna take your photo!
聞けばその花を明日の朝、自分の片思いに渡すと言う。
「一年前からの一目惚れで 帰国前に今伝えたい」
あまりにシナリオ染みた1日(の最後)だが、不意な出会い。とても幸せだ。

“I WISH YOU LUCK.”
頼む、明日。
いい返事で、あってくれ。

そんなことで（僕は）今日も、
しようと思った洗濯はできず、
大事なメールに返信もしてない。
帰りに！とメモした「水」も忘れ、
今、パンイチ、部屋の中。

このまま風呂も入らず眠るだろうか。
明日は早く起きれるだろか。

うん、もう、もういいから。
つべこべいわず、がんば、ろう。